『すずめの戸締り』の気になるあのシーンを解説

鎮魂と和解の物語

2回目の「すずめの戸締まり」を見てきました。

滅多にないことなのですが
1回目よりも2回目の方が遥かに面白かったです

1回目では気づけなかったことが
2回目になるとたくさん気づくことができました


ネタバレを含みますが
ぜひ、一緒にこの作品を深めていきましょう!

何か1つに対して
深く多面的な視点を持てると
世界そのものを、深く多面的に見れるようになるので

世界を見る、あなたのフィルターが
どんどん面白くなっていきますよん。

よっしゃ!いくぜ。


キーワード

//ダイジンの目的
//草太はなぜ椅子になったのか(足が1本欠けていたことにも注目)
//鎮魂と光
//A面B面
//和解の物語
//毒親
//ミミズ
//ネガティブな想念
//子供のすずめを救ってくれた人は誰だったのか
//芹澤のオープンカーの屋根はなぜ閉じたのか笑!!


全体を通して
すずめの戸締まりは「鎮魂」を軸にした作品だったと思います。

東日本大震災である3/11

すずめの戸締まりは
この日に傷ついた人たち
傷ついた魂たちに安らぎを与えるところから
インスピレーションを受けて生まれた作品なのだと思います。

実際の舞台は九州の方でしたが、
すずめの地元は東北で、ガッツリ津波と地震に壊滅的な被害を受けた地域になりますから。


すずめは幼少期に
震災でお母さんを亡くしています。

そこで、お母さんの姉妹である叔母の環(たまき)さんが引き取ります。

お母さんの形見である「イス」を抱えて
雪の中でうずくまっているすずめを見つけて
「うちの子になろ」って必死に抱きしめます。

自分の姉を亡くした傷心もあったろうに。
環さんも本当に強く素敵な女性ですね


ただ、この環さん

実際は
「毒親」
「すずめの自己開示ができない原因」
だったりします。

と言うのは
環さんはすずめのことを面倒みないと!
と言う使命感から

すずめの行動を逐一心配しています。

何をやろうにも
「大丈夫なの?」
「どんだけ心配しよるとおもっちょると?!」
と詰めますw


それが
鳥籠感というか
閉塞感というか

すずめの自己表現を閉ざしていたのかもしれません
同時に、自分の人生の自由さも奪っていたわけですね。

実際、
導きの役割であるダイジンが
まず最初に行ったことは

「環さんからすずめを引き剥がすこと」

だったわけですね。


そこからすずめは自由に人生を生き始めます。


そして、
椅子になった草太と一緒に
ダイジンを追いかけて
日本を横断していきます。


その中で体験したことには
対比のように

A面「人の温かみに触れる」
B面「ネガティブな想念の鎮魂」

の2面性があります。


まず、A面として

「すずめは何か大事なことをしているように見える」
と、同世代の女の子からご好意を受けて
泣くほど美味しい食事と、寝るところ、衣類をプレゼントされたり

大雨を雨宿りしていたら
長距離運転を気前よく引き受けて
目的地に届けてくれたママさんがいたり。

日本各地で「人の温かみ」→「光に触れる体験」をするのです。


一方でB面
戸締まりをし鎮魂をしていきます。

廃墟で寂れた場所で
その土地に暮らしていた人のことを思い
ミミズとして出てきた人々のネガティブな想念を鎮魂していく。

もし鎮魂ができなければ
ネガティブな想念によって生まれた歪みを整えられず
それは大地震を起こすことによって歪みを解消しようとします。


このように
ネガティブな想念に触れて
鎮魂するために、旅をしているのです。

一方で、

旅をする中で「人の温かみ」に触れてもいる。
まさに、光を集めるような体験ですよね。

この2つの側面が大切だったのです。

​​
ところで、
すずめにとってダイジンの存在を
肯定できるようになるのは
物語の最後の方なのです。

ダイジンとの出会いは
地元の廃墟にある扉を発見したとき

要石であることに気づかず
うっかり抜いてしまうことで出逢います。

結論から言うと
ダイジンはいわゆる「守護霊」のような存在だったのですよね。
すずめの人生を導く。そんな役割。

導きって全てが心地いいものではありません。

のちのち書きますが
草太が要石になり、すずめの手によって戸締まりして
向こうの世界に閉じ込めないといけないこと。

それはすずめにとって人生で最も辛い瞬間の1つだったと思います。
が、これも、導きの1つだったのです。


ちなみに
要石が外れたこと=結界が壊されたこと

草太になった形見の椅子の足が
1本欠けて3本であること

はリンクしているんです。

結界って
4つ角を作り、囲うことで成立します。

なので、
要石が抜かれて結界が壊れたことと、
草太が壊れた結界を示す、3本足の椅子にに転生?wするのも

細かい視点ですが
相関していて面白いなと思いました。


話を戻します。

戸締まりの旅をしていくなかで
要石になってしまったことを悟る草太。

大好きな草太を
要石の草太として向こうの世界に置いてこないといけない場面があります。

すずめにとって試練でしたね・・・。


あのシーンは本当に辛かったと思います。
それをきっかけに、

草太を要石にしたダイジンに対して
大っ嫌い!!と絶縁宣告のようなものをします。


そこからのすずめの行動は
草太をもとに戻すこと。

そのためには、
向こうの世界に入り草太に会いにいくこと。

向こうの世界にいくためには
死ぬまでに通れる扉は1つ、というルールのもと
幼少期にたまたま通った扉を地元東北まで探しにいく。

という行動でした。
強く、迷いがない。
揺るぎない意図を感じましたね。


そして
この旅が、すずめが癒されることや
環が癒されることに、とても大切なトリガーとなったんですよね。

すずめは
お母さんを亡くしたことで
幼少期の日記を真っ黒に塗りつぶしたり
当時の記憶がなくなるくらいのショックを受けています。

環は
傷ついたすずめを育てると誓ったことが
自分の人生の首を絞めてしまっているのです。

その両方を癒すためにも
2人が東北へいく必要があったのです。


道中、環はすずめに思っていたことが爆発します。

まさにミミズが暴れて地震を起こすように
飲み込んでいたいろんな思いが
噴火するように吐き出されて
すずめにとても冷たい言葉を浴びせてしまいましたね・・・。

でも、実際は
それは本心であるけれど、本心ではない。

物事のA面B面のように
本当は、すずめと過ごした人生が本当に幸せだった

けれど、小さく積み重なっていた嫌な感情が
すずめが家出したことがトリガーになって爆発したんですね。


ここで、環が爆発して
本音を言えたことによって
すずめの行動は変化するんですよね。

頑なに、環さんには言ってもわからないよ。
と自分を語ることを拒んでいたのに

好きな人に会いにいくんじゃ!

と自分の思いをストレートに伝えられるようになる。


まさに、
2人の間にあるわだかまりが解消されたことで
絆が深くなり、笑顔がいっぱいな空間になりました。

2人は吹っ切れることができたんですよね。
和解です。

よかったよかった。


そうやって
なんとか辿り着いた扉。


草太を助けようとして
一度、鍵を開けようとします。

その時に
その場にある気持ちや感情に触れて行った時に
初めて、草太の思いに気づくのです。

孤独で、怖くて、冷たくて仕方がない。。。


そんなふうに苦しんでいる草太を
絶対に助けたいんだ!!とすずめは愛を叫びます。


大好きなお母さんを亡くしてしまったすずめは
改めて草太という大切な人がいなくなった世界で生きたくない!
そんな世界は怖くてたまらない!!と

草太への愛を叫ぶんですよね。
がむしゃらに。


そして
その思いは要石になった草太の凍るほど冷たい絶望を溶かして
草太をもとの人間の姿に戻すんですよね。

そこから、すずめはダイジンの意図に気付きます。
実はダイジンがここまで嫌がらせをしていたのではなく
自分を導いてくれていたんだ!

ということにも、無事気づ苦ことが出来、感謝が溢れ
草太と共に、要石を差し込んで、鎮魂をしたわけですね。



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シーンはクライマックス。

鎮魂された美しい世界で
すずめは過去の自分に出会うのです。

それは子供の姿をしており
母を亡くして、扉を通り、迷い込んだ過去の自分だったのです。

そこで
子供の自分は必死に母を探しています。

お母さんを知りませんか!
看護師をしていて
ものつくりが得意で・・・
お母さんを知りませんか!!
・・・うええええん

と大泣きしながら。


そんな過去の自分を見たときに

「大丈夫だから。
あなたは強く生きていける。

今は、分からないかもしれないけれど
それがわかる時がくる」

(のようなセリフだったと思いますが・・・)
そういって、過去の自分を安心させます。


なぜ、これができたのか。

ここで鎮魂の旅を思い出すのです。


今までの人生は、
大好きな母を亡くし
環さんの縛りプレーもあり

暗く閉ざされた世界だった。


でも、
自分がダイジンを追いかけて
日本を旅している時に

たくさんの人に助けられて
人の持つ「光」に触れる体験をして

この世界も捨てたもんじゃない!
人に大切にされる体験って素晴らしいなって思えて
失いたくない草太にも出逢えた。


そうか。
世界は真っ黒に閉ざされた世界だと思っていたけれど
実は愛の光で満たされた世界だったんだ!

と気付けたのです。


だからこそ
子供の自分に思いを伝えることができた。
安心を届けることができた。
愛を伝えることができた。
光の体験をシェアすることができた。

そして
実際に、自分はこれを光の体験として
生きる糧として
夢の中で見ては、涙を流していたんですね。

お母さんらしき人が、私を助けてくれたんだ。って。
そうやって頑張って生きてきた。

でも実際にその人物は自分だった。
という世界設定が面白いですよね。


そうして
すずめが鎮魂されて、この物語は終わりを迎えます。


最後に。
超細かいことですが!笑

草太のお友達の芹澤くんのお話をします。
けっこう、彼のキャラが好きですw

芹澤は教員免許試験でストレスフルな生活を送っていた中で
その試験会場に草太が現れなかったことが気がかりで
自分自身も試験に集中できませんでした。

だからこそ
草太がなんで来なかったんだよ!
ふざけんな!
心配して集中できなかったじゃねーか!

・・・とはいえ、
ダチとして心配だし、会いにいこう!

というところから
すずめと行動を共にします。


大雨が降った時、
オープンカーの屋根は閉じませんでした

あと一歩のところでw!


しかし、
目的地まであと20キロ地点で
ダイジンがしゃべったことに驚き事故を起こします

道を外れてしまい、
ゆっくり田んぼに落ち
無事、地面に激突。

その衝撃で
エアバックが飛び出します。


そして!
ここで、オープンカーの屋根が閉じますwww

なんというか。
このシーンも面白いなって思って。

自分は事故って、大切な愛車が壊れ
おいおい嘘だろってなる。

そんな中で
すずめは「あと20キロ!お世話になりました!残りは自分で行きます!」
と走り出す。

すずめを見て環も
「私もいくね!」

と放置自転車にまたがり
かっ飛ばしていく。


そんな小さくなっていく2人の後ろ姿を
タバコを吸いながら見届ける芹澤は
なんでか深刻さがなくて、晴れやかなんですよね。


愛車の事故
=日常のつまらないルーティンの破壊
=鎮魂された
=戸締まりされた
=オープンカーの屋根も戸締まりしたwww

こんなギャグみたいな細かい設定も
おもろいなって思いましたw



と!
ということで。

ここまで読んでくれたあなた
本当に、ありがとう。

とても長かったでしょう笑。


この記事のことを踏まえて

もう一度映画館に足を運んで見てくださいな。
きっと、面白い体験になる。

初めての人は初めて
2周目の人は2周目
それ以上の人は、もう何度でも笑

すずめの戸締まりを見に行ってみてください^^


違った視点で見えて
また楽しめると思います。


いい映画だったな〜。

僕は、すずめの戸締まりが
とっても好きです。


ではでは〜!!


(言語化ってむずい!🤣)